ノスタルジックなコロアンを気ままに歩きたい!
Nostalgia in Coloane


1 ノスタルジックなコロアンを気ままに歩きたい!
Nostalgia in Coloane
①アントニオ・ラマルホ・エアネス大統領広場②観音廟③天后古廟④譚公廟⑤図書館⑥聖フランシスコ・ザビエル教会⑦三聖宮 ⑧コロアン埠頭 【所要時間:約2時間】
左:彩り華やかな観音古廟。中:海の安全を願って参拝者が訪れる天后古廟。右:裏通りは静かで、とてもカラフルな色合い

左:彩り華やかな観音古廟。中:海の安全を願って参拝者が訪れる天后古廟。右:裏通りは静かで、とてもカラフルな色合い

「そうだ、コロアンへ行こう!」

きらびやかな街・マカオ。いたるところ熱気があふれ、度肝を抜かれることばかり。壮大なスケールの建物やスリル満点のスペクタクルショーの数々に、つい寝ることさえ忘れて、遊び続けてしまう。

数日間、目一杯その魅惑の世界にはまり込んで精力を注ぎ続けた頃、ふっと「どこか、静かなところに行きたいな…」との思いが頭をよぎった。

その時、口をついて出たのが冒頭のひと言である。瞼を閉じれば、かつて訪れたことのある、のどかなコロアンの情景が浮かんできた。最初に訪れた時は、たっぷり情報を頭に詰め込んだ上で、ガイドに詳しく説明してもらいながら忙しなく見てまわったものだが、今は何もかも忘れて、心の赴くまま歩きたい気分だ。

そう思い立つや、迷うことなくホテル・リスボア前のアマラル広場バス停から、バスに飛び乗った。大海原に浮かぶマカオ・タイパ橋を渡ってコロアンへ直行。約30分のバス旅を終えて、かわいい天使像のあるロータリー前のバス停に降り立つや、「やっぱり、いいなぁ~」と、つい微笑んでしまった。アントニオ・ラマルホ・エアネス大統領広場と名付けられたこの広場一帯に、ガジュマルの大樹をはじめ、目にも鮮やかな緑があふれていたからだ。

観音様の慈悲深さにふれるコロアン最古の寺院

左:美女巷という名の通り。中:広場前で旅行客ファミリーがみんな揃ってパチリ。右:天使の銅像のある大統領広場

左:美女巷という名の通り。中:広場前で旅行客ファミリーがみんな揃ってパチリ。右:天使の銅像のある大統領広場

表通りを避けて、車も入れない小径へと迷い込む。左右に連なるのは、古くから立つ小さな家々。それでも、どこもかしこもパステルカラーに彩られているから、歩いているだけで心がウキウキしてくる。

アズレージョの道路表示板を見ると、中街と記されている。その細い路地を南へ100mほど歩いたところで、小さな観音古廟へと突き当たった。200年以上前に建てられたというコロアン最古の廟だ。観音菩薩を祀る仏教寺院だが、廟内の鮮やかな色使いには何度来ても驚かされてしまう。

しかも、スピーカーから流れ出てくるお経は、まるで歌謡曲のような調べ。それもこれも、慈悲深い観音様ならではの大らかさの証しといえるのかもしれない。

「確かこの近くにも、いくつか廟があったはずだけど…」との記憶を頼りに、バスケットコートの向こうにある天后古廟(ティンハウグウミュウ)や、市街地南端にある譚公廟(タムコンミュウ)へも向かった。コロアンはとても小さな町だから、迷う心配もなく行きたいところへすぐ行けるのがありがたい。

天后古廟は、道教の女神・天后(別名・媽祖)という名の航海の神様が祀られているところ。一方の譚公廟は、明代に実在した人物で、同じく航海の安全を守ってくれるという道教の神・譚公が祀られている。その譚公廟では、クジラの骨で作られたドラゴンボートが必見。廟を管理する梁晩承(リャンマンセン)さんの話では、「150年も前に、このあたりの漁師たちが彫ったもの」だとか。「細工も細かいし、いい仕事しているでしょ」と、うれしそう。

ドラマの舞台にもなったカラフルな教会へ

譚公廟からは、海岸線に沿って北上することに。十月初五馬路と名付けられた海岸通りに設けられた遊歩道は、カルサーダス(石畳)が敷き詰められて、とてもおしゃれな雰囲気だ。

時折ポツンと置かれたベンチに腰掛けて、対岸の光景を眺めるのは心地良い。すぐ真向かいに見えるのは、中国本土の横琴島である。昔の陸地はもっと遠方にあったような気がするが、埋め立てが進んで、ぐんぐん近付いてくる。そこはすでに世界最大級の水族館があるという、巨大な海洋施設群である。いずれは島全体が第2のマカオともいうべき一大リゾートへと変貌を遂げるのだろうが、ここコロアンの街並みだけは、今も昔と変わらないのどかさだ。

さらに海岸線に沿って北へ。レモンイエローのコロアン図書館を過ぎたところで、かつてフランシスコ・ザビエルの聖骨が祀られていたという聖フランシスコ・ザビエル教会へとたどり着いた。

ここで思い出すのは、韓国ドラマ『宮~Love in palace』の最後のシーンだ。このドラマは2006年に放映されたもので、平凡な女子高生がプリンセスになるという韓国ならではのラブロマンスである。その最終回に結婚式の会場の外観として撮影に使われたのが、この教会。ヒロインとなったチェギョン(ユン・ウネ)と皇太子シン(チュ・ジフン)とが、ラストシーンで心をひとつに通わせる…。レモンイエローと白が調和する爽やかな教会は、その幸福なシーンの背景にふさわしい。

「そういえば、ヒロインの女の子が自転車に乗って、教会前を何度も行き来するシーンもあったね」と話すのは、広場にあるポルトガル料理と中国料理が味わえる雅アー憩ヘイ花ルンガ園ティン餐チャーン廳テンの女将さん。ちなみに、同最終回でたびたび登場するエッグタルトは、このすぐ北にあるロード・ストウズ・ベーカリーで作られたもの。今や1日1万2千個も売れるという超人気スイーツで、このドラマがきっかけで、韓国でも大人気になったのだとか。この日も、6個入りを箱買いする人も多く見かけた。1個9パタカと価格は手ごろだ。

左:譚公廟にある、クジラの骨で作られたドラゴンボート。中:子宝の神様といわれる金花娘娘も祀られている。右:コロアン埠頭前は、いつ来てもひっそりとした雰囲気に包まれている

左:譚公廟にある、クジラの骨で作られたドラゴンボート。中:子宝の神様といわれる金花娘娘も祀られている。右:コロアン埠頭前は、いつ来てもひっそりとした雰囲気に包まれている

道教寺院が多いのは病院も兼ねていたから?

ちなみにマカオの旧市街地を歩いていると、至る所に道教寺院や仏教寺院が点在しているのに気がつく。なかでも道教寺院が多いが、それは道教寺院のお坊さんにあたる道士が、医術に長けていたことが理由のひとつかもしれない。道教の真髄ともいえる不老長生を願って様々な薬剤が開発されたことで、多くの人々からありがたがられたのだろう。ともあれさらにその北にある、三聖宮にも立ち寄ってみた。ここに祀られている三聖とは、観音娘娘(クンヤムニェンニェン・観音菩薩)や華光大師(ワーゴンダイシ・黄檗宗おうばくしゅうの祖そ)に加えて、女性の守り神といわれる金花娘娘(ガンファニェンニェン)である。そのせいか、うら若い女性の参拝者も多い。

三聖宮の先にある埠頭まで足を延ばしたところで、コロアン・ウォーキングも終了。小さなコンクリートむき出しの埠頭から対岸の横琴島へは、食料品を運ぶために業者専用の小舟が行き来しているが、これにはめったにお目にかかれない。いつ来ても閑散とした風情が漂っている。2軒ある魚の干物店の素朴さも相変わらずだ。まるでここだけ時の流れが止まったかのようで、それがかえって心が洗われるようで清々しい。

「いつまでも、このままであって欲しい…」そう願いながら、再びきらびやかな半島へと舞い戻ったのである。

ノスタルジア・コロアンマップ

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