2 | ちょっぴり気取って昔日のタイパ・ビレッジを散策 Bygone Days of Taipa Village ①醫霊廟 → ②観音堂 → ③タイパ・コロアン歴史博物館 → ④天后廟 → ⑤北帝廟 → ⑥官也街 → ⑦カルモ會堂 → ⑧カルモ教会 → ⑨タイパ・ハウス・ミュージアム 【所要時間:約3時間】 |
「ちょっと気取って歩いてみよう…」
そんな軽やかな気分で出かけたのが、リゾートホテルが林立するコタイの北に連なるタイパ・ビレッジである。コロアンほど素朴というわけではないが、落ち着いた風情は散策するのにうってつけだ。ただし、コロアンと大きく異なるのは、立ち並ぶ家々の中に、ポルトガル統治時代に建てられた瀟洒なものが多いという点。かつてはポルトガル人の別荘地だったこともあって、おしゃれな建物が多いのだ。
それだけに、ここではちょっぴり気取って歩いてみたい。有名なポルトガル料理店も多いから、初めて訪れるなら、高級店へと繰り出して、ちょっぴり贅沢をしてみるのもいい。それでも2度目3度目の訪問ともなれば、むしろ通りすがりにお気に入りのお店を見つけて、ふらっと入るのがおすすめ。リーズナブルで、しかもおいしい料理が味わえるお店がそこかしこに点在しているからだ。懐具合をさほど心配しないで入れる店が多い、ありがたいお散歩コースである。
健康を祈願しタイパの歴史を学ぶ
まずは、嘉模泳地(ガアモウィンデイ)という名のバス停で下車したい。医療の神様を祀った醫靈廟(イーリンミウ)は、このバス停近くにあるからだ。醫靈とは特定の神様ではなく、三国志にも登場して奸雄・曹操の治療にあたった華佗や、薬王とも呼ばれた伝説の帝王・炎帝など、医療にかかわる神様の総称なのだとか。持病のある人は、ぜひとも立ち寄って、お祈りしておきたい。
その先100mほどの観音堂にもお参りしたが、こちらは内装もきれいで、心なしか訪れる人が多そう。管理人の女性が言うには、「観音さまは商売繁盛にもご利益があるからね」。観音菩薩を商売にも結びつけるその発想力には、感服するばかりだ。
ちなみに、観音堂のすぐ向かいにパンダという名のレストランがあるが、ここはポルトガルのマカオ植民地支配を実質的に終わらせた、一二・三事件の舞台となったところとしても有名だ。学校建設推進派による住民運動をポルトガル側が抑えきれなかったことで、権威が大きく失墜してしまったという歴史的事件だ。
さらにその先、同レストランから西へ200mほどのところにあるペパーミントグリーンの瀟洒な建物は、タイパを訪れる観光客が必ずやってくるというタイパ・コロアン歴史博物館である。ここでは2階にある爆竹作りの工程を再現した、小さなジオラマが必見。そのモデルとなったのは、最初に降り立った嘉模泳地バス停のすぐ前にある益隆炮竹廠(イックロンパウチョクチョン)。かつて、タイパの主要産業であった爆竹の工場の跡地である。同博物館内には、蝦醤やオイスターソースを作るための道具類も展示されているから、こちらもお見逃しなく。博物館の南側には、海の守り神である媽祖を祀った天后廟もある。さらに博物館の北側にあるのが、玄武大帝とも呼ばれる道教の神様(水の神様でもある)を祀った北帝廟だ。
ここから飲食店やみやげ物店などが立ち並ぶ地堡街(デイポーガイ)を東へたどると、200mほどで消防局前地という名の広場に出る。伝統工芸品やアクセサリーなどの露店が並ぶ、サンデーマーケットが開催されるところ。ぜひ、日曜日を狙って訪ねたい。
そこから南へと連なる通りが、タイパで一番賑やかな官也街である。ポルトガル料理や海鮮料理などの名店のほか、杏仁餅をはじめとするお土産店がずらり。
「豚肉入りの肉切酥は、うちのオリジナルだよ」という3代目・高培基(コウプイゲイ)さんが経営する晃記餅家(フォンゲイベンガー)などの老舗めぐりも忘れずに。また、南端にある莫義記貓山王(モッイーケイマオサンワン)で売られている強烈な臭いを放つドリアンアイスも不思議と癖になる味で、訪れるたびについ買って食べてしまうのだ。
旅人をもてなしてくれそうな微笑ましさ
そして、ちょっぴり気取った街歩きが楽しめるのが、ここから。洗練された建物のカルモ會堂に面した嘉路士米耶馬路(ガーロウシーマイヤーマーロウ)の石畳の坂道は、まさにヨーロッパの古い街並みそのまま。どこを切り取っても絵になる、最高の撮影スポットでもある。
坂道を登りきったところにあるのが、クリームイエローのカルモ教会。教会前の広場を抜けて階段を下りると、レトロな家並みが連なるタイパ・ハウス・ミュージアムにたどり着く。ここでは有料で3カ所の住宅内を見学できるが、その最初の住宅内に飾られた写真に惹き付けられてしまった。今にもその家族が現れて、旅人をもてなしてくれそうな微笑ましい家族写真だったからだ。
小さなテラスに出て南へと目をやれば、巨大リゾートエリアのコタイに林立するホテル群が、蓮池の先に見えてくる。時間があれば、広場に置かれたベンチにしばし腰掛けて、夕暮れ時を待ちたい。薄暮にきらめくネオンを眺めるというのも味わい深いものがあるからだ。蓮池をはさんでマカオの新旧が対峙するというその情景を、瞼にしっかり焼き付けてから帰路につきたいものである。

左上段:お土産店や飲食店が立ち並ぶ官也街の賑わい。左下段:蓮池の向こうにコタイのリゾートホテル群が連なって見える
右上段:壁に掛けられた家族写真が心を和ませてくれる。右中段:廟内には渦巻き型の線香の煙が絶えない。右下段:北帝廟はタイパ最古の道教寺院
いよいよ街歩きにぴったりの季節が到来。本紙前号と今号でご紹介のウォーキング・コースに沿って、ぜひマカオを堪能してほしい。そして、ウォーキング・コースをより楽しむなら、マカオ政府観光局の2つのサービスは要チェックだ。
【サービス その1】
公式無料モバイルアプリ「Step Out Macau(ステップアウト マカオ)」
8つのウォーキング・コースを、見どころや飲食店の情報に加え、MAP、週末パフォーマンス情報などとともに紹介している。言語は英語、ポルトガル語、中国語。
また、「Experience Macau APP(エクスペリエンス マカオ アプリ)」も要チェックだ。観光スポットの紹介はもちろん、最新イベント情報や観光関連ニュースを随時アップロードして提供している。また、GPS機能もあるので、目的地までナビとしても利用できる。
【サービス その2】
バス・ハイライト・ツアー
世界遺産登録10周年を記念して、ウォーキング・コースの見どころを巡るバスツアーがスタート、好評を博している。