Black and Green :The Origin of Vitality Comes From Various Kinds of Colors
マカオの台所にあふれる色彩
濃いピンクのレンガの建物は「紅街市(ホンガイスィー)」という市場で、いわば「マカオの築地」。庶民の台所として、常ににぎわっている。建物の色とその名から「レッド・マーケット」と呼ばれている建物に入ると、野菜の緑や黄色、肉の赤、水をはったトレーの中でバチャバチャと跳ねる生きた魚やエビのグレー、真っ赤なイチゴや名前もよくわからない南国の果物の濃い紫など、色彩のオンパレードだ。
鶏屋のおばさんが、「台の上に置かれている黒いものは烏骨鶏(うこっけい)。栄養価も高いし、おいしいから昔の中国では「不老長寿」に効くと珍重されたんです」と教えてくれた。
おばさんの背後に生きた鶏が入ったゲージがずらり。ゲージから出して、手早くさばいていく。お客さんはさばいたばかりの鶏を買っていく。新鮮このうえない!
向こうの魚屋さんでは、エビを置いたトレーの横になにやら黒いものがうごめいている。
「あ、これはカエル。おいしいですよ」とこともなげにお店の人はいう。カエルの横には「田鶏」の文字が。こんな風に漢字で表現されると、なんだかおいしそうに見えてくる。
黒は元気の色
下町のジューススタンドのようなところに人だかりがしている。近寄ってみるとポットがいくつも置かれている。実はこのスタンドは涼茶と呼ばれる煎じた漢方茶の立ち飲みスタンド。お店の人に自分の体調を説明すると、煎じた漢方茶の中から状態に合うお茶を選んでくれる。日本でいえばサプリメントのようなものだ。
「喉がザラザラするの、声も出にくいし」という女性が、「調子が悪い時は、ここに来る。カップ一杯飲めば、すっきりするのよ」という。ちょっと味見をさせてもらうと、とたんにお店のおばさんの声が飛んだ。
「ちゃんと、カップ一杯の分量を飲まないと効かないよ。お茶は人のものを飲んじゃダメ、自分に合うものでなくちゃね」。
で、そのお茶の味はというと、苦くて、古臭いような、そしてどこか甘いような…と、なんとも表現しがたい。とにかく効きそうな味だった。
公園の緑は活力の色
山手線内の半分ほどの面積のマカオだが、街中のあちこちに公園があり、緑が多い。地元の人たちは公園で過ごす時間が日課になっている。早朝は太極拳のグループや大音量で音楽を鳴らしながら体操をする人、休日の昼下がりに楽器の練習をするチーム。
坂の街マカオらしく敷地内にアップダウンのある公園も多く、ジョギングやウォーキングに汗を流す人も目立つ。
南国らしい濃い緑に包まれた公園は、そこにいるだけで森林浴気分が味わえる。マカオの人たちにとって公園の緑も活力の源になっている。
緑のワインと赤いワイン
マカオの食とともに楽しみたいのがポルトガルワインだ。ヨーロッパ最古といわれるワイン製造の歴史を誇り、個性的な味わいのワインが多いとグルメたちの人気が高い。ポルトガルのワインといえば、ポートワインが思い浮かぶ。深みのある赤い色と甘めの味わいは食後酒として人気が高い。
マカオには何度も旅しているというマカオ好き女子のおすすめは、ヴィーニョ・ヴェルデ。「緑のワイン」という意味で、その名の通りの薄いグリーンのワイン。見た目も涼やかだ。
「微発泡性で酸味があって、きりっとした味。湿度が高くて暑いマカオの夏には、よく冷やして飲むと爽快感たっぷりですよ」と教えてくれた。
かつては海外輸出が少なくなかなか手に入らないとされていたポルトガルワイン。ブドウ色ならぬ緑のワインは、マカオの夏に似合うさわやかさだ。
・◆・東西文化の融合から生まれたマカオの美食・◆・
マカオではバラエティ豊かな食事が楽しめる。例えば、かつての宗主国であるポルトガルからやってきた料理は魚介類をふんだんに使い、オリーブオイルやレモン、塩などで味付け。代表的な食材は、バカリャウ(干しダラ)で、ジャガイモや卵と炒めたり、コロッケにしたりと、日本人の口にも合う。
一方、中国料理は広東料理が中心で、他にも上海料理店や四川料理店も。
この2つの国の味から生まれたのがマカオ料理だ。アフリカン・チキンや蟹カレーなど、ターメリックやタマリンドなどの香辛料をふんだんに使ったスパイシーな味は、その黄色や橙色がかった見た目も相まって刺激的!
現地に暮らす日本人主婦は「マカオ料理はもともと、家庭料理。一般的には、新鮮な魚介類を使い、中国料理の伝統を残しながら、スパイスを使う料理法が中心ですね。母から娘に伝えられる各家庭直伝の味もありますよ」という。
大航海時代からマカオの東西交易にまでつながるマカオ料理。下町の食堂でマカオ料理に舌鼓を打っていた二人連れの日本人女性は、「実際に食べてみると、長い歴史の味というか、どちらかとういうと複雑な味。さまざまなスパイスを使って、奥深い味ですね」と、満足そうだ。