マカオの初夏は水にまつわる祭りで盛り上がる


Early summer marks the start of festivals celebrating water.

マカオの初夏を代表する「ドラゴンボートフェスティバル」

5月に入るころには、「ドラゴンボートレース」の練習風景が見られることも。レースは男性、女性、男女混合があり、漕ぎ手の数によって10人、20人の部もある。

5月に入るころには、「ドラゴンボートレース」の練習風景が見られることも。レースは男性、女性、男女混合があり、漕ぎ手の数によって10人、20人の部もある。

珠江の河口西岸に位置する小さな半島と、埋め立てでひとつにつながった島部(タイパ、コタイ、コロアン)からなるマカオ。どこにいても水の気配がし、古くから水にまつわる行事が多い。その代表格が、旧暦の5月5日(今年は6月7日)に開催される「ドラゴンボートフェスティバル(端午節)」と、その祝賀イベント「マカオ国際ドラゴンボートレース」だ。

「ドラゴンボートフェスティバル(端午節)」の起源については諸説あるが、最も広く知られているのが、春秋戦国時代の政治家であり愛国詩人の屈原(くつげん)にまつわる伝説だ。楚の高官として活躍していた屈原は皇帝からの信頼もあつかったが、それが却って妬みを買い、権力闘争に破れ追放されてしまう。流浪の旅の道中で国への思いを詩に託した屈原だったが、国を憂うあまり、旧暦の5月5日に現在の湖南省・泪羅(べきら)江に身を投げてしまった。気づいた周辺の村人たちが船で救助に向かうも、時すでに遅し。せめて屈原の体が魚に食い荒らされないよう、人々は、食べ物を投げ込んだり、銅鑼や太鼓を叩いて魚を追い払ったという。その後も、毎年5月5日になると、屈原を偲ぶ儀式が行われるようになり、ドラゴンボートレースや、粽を食べる習慣が定着していった。

マカオの専門学校で観光サービスを学んでいる女子学生によると、「端午節の粽は、もち米の中に肉や木の実などを詰め、竹の葉で包んで蒸したピラミッド型のものが一般的。日本の粽に似た白い餅菓子のようなものや、カラフルに色付けされたものもあり、中国料理店やスーパーにいろいろな味のものが売られています。他の時期には、ほぼ見かけない、端午節ならではの楽しみです」とのこと。一方、伝統のドラゴンボートレースは、今や国際競技へと発展。地元マカオの企業チームや、学生、公務員チームのほか、アジア各地から強豪チームが参戦する。

今年は6月1、2、7日に南灣湖で開催される予定だ。レースでは、ボートの先頭に「太鼓手」が座り、「漕ぎ手」は左右交互に、最後尾には「舵取り手」が乗り込む。勇壮な太鼓のリズムに合わせて、漕ぎ手が勢いよくパドルを振り上げ、水しぶきを上げながらスピードを競う様には、初めて見る人でも引き込まれるはず。鳴り物などを使った、賑やかな応援合戦も見ものだ。

「無料の観覧席があるので、旅行者も気軽に観戦できますよ。地元の人たちと一緒に、ぜひ応援してください」(同)。

海の民の信仰を集める「天后」「潭公」「北帝」

タイパにある北帝廟。伝説によると、悪魔の王を倒した北帝は報酬として神の称号を与えられ、暗黒地獄で最も尊い王様になった。マカオでは水の神様として信仰され、生誕祭には、広東オペラが奉納される。

タイパにある北帝廟。伝説によると、悪魔の王を倒した北帝は報酬として神の称号を与えられ、暗黒地獄で最も尊い王様になった。マカオでは水の神様として信仰され、生誕祭には、広東オペラが奉納される。

マカオに最初に移り住んだのは、中国の漁民たちだといわれる。1930年代までは住民の7割が漁業に従事していたそうで、漁業が衰退した今でも、市場や魚介類の加工業を生業とする人は多い。そのため、海の守り神に対する信仰はあつく、「天后(阿媽、媽祖)」「潭公」「北帝(玄武大帝)」といった神々を祀る廟には、線香の煙が絶えない。

現地のツアーガイド氏が、「天后を祀るマカオ半島の媽閣廟、潭公を祀るコロアンの潭公廟、北帝を祀るタイパの北帝廟は、いずれも島の突端かそれに近い所に建てられており、船乗りや漁師たちを見守ってきました」と、教えてくれた。

とりわけ、マカオ最古の寺院である「媽閣廟」の歴史は古く、ポルトガル人がマカオに初めて上陸したときには既に今の場所にあったとされ、マカオの名の由来ともいわれる。

マカオ最古の寺院、媽閣廟は多くの参拝客でにぎわっている。

マカオ最古の寺院、媽閣廟は多くの参拝客でにぎわっている。

伝説によると、その昔、広東省から福建省に向かうジャンク船(中国の木造帆船)が嵐で遭難しそうになったが、阿媽という少女の霊験でマカオ半島へと導かれた。少女は姿を消したが、その後、女神として再来。その場所に建てたのが「媽閣廟」なのだとか。

「阿媽の生誕祭(天后節/4月27日)には、今も多くの漁業関係者やその子孫が家族総出で参拝に訪れ、広東オペラやライオンダンスが奉納されたり、パレードがあったり、とてもにぎやか。『北帝生誕祭』(4月7日)、『潭公祭』(5月12日)も、それぞれの廟で祝賀行事が開催されますので、ぜひのぞいてみてください。マカオの人々の素朴な信仰が感じられますよ」(同)。

なんとも豪快&ユニーク!漁民組合が運営する奇祭

酔龍祭は漁民の祭り。腕っぷしの強そうな漁師たちが、龍の頭と尾を持って踊りながら街を練り歩く。

酔龍祭は漁民の祭り。腕っぷしの強そうな漁師たちが、龍の頭と尾を持って踊りながら街を練り歩く。

「潭公祭」と同じ日、マカオ半島では、もうひとつの祭りが開催される。世界的にも珍しいマカオならではの奇祭「酔龍祭」だ。清王朝の康煕帝(こうきてい)の時代、疫病に苦しんでいた村を神聖な龍が救ったという故事から始まったとされる祭りで、マカオの漁業組合が運営している。祭りは、世界遺産の三街会館(関帝廟)からスタート。男たちが龍の頭と尾を持ち、互いに酒を飲ませ合い、「酔龍踊り」を踊りながら内港までを練り歩く。

水神でもある龍のダンスは祝い事に欠かせない。

水神でもある龍のダンスは祝い事に欠かせない。

市場で働く女性が、「踊り手は、市内の市場や飲食店を巡回していきます。酔っ払ったような足取りで、あっちへフラフラ、こっちへフラフラ。演技なのか本当に酔っているのか、最初のうちはわかりません。あちこちで酒をふるまわれ、それを時折ブーッと勢いよく吹き出すと、周囲から大きな歓声が上がります。立ち寄る先々で酒を振る舞われるので、終盤は確実に酔っ払っていると思いますね(笑)。ただ、不思議なことに、酔うほどに踊りにキレが出てくるようなんです」と、楽しそうに話してくれた。

祭りが進むごとに参加者も見物客も酔いが回って、夜はあちこちで大宴会。こんな楽しいお祭り、参加しなきゃ損!