11月 疾走するマシンの爆音にしびれる


マカオGPの主役、国際F3レース。最大速度は時速270キロにも達する。モンスターマシンを駆るのは将来のF1 世界チャンピオンだ

マカオGPの主役、国際F3レース。最大速度は時速270キロにも達する。モンスターマシンを駆るのは将来のF1 世界チャンピオンだ

November: Feel the vibration of the exhaust note in the air

公道がサーキットに変身

公道を封鎖したサーキットをマシンが限界ギリギリの走りで駆け抜ける。デコボコの路面、カードレールはむき出しのまま。これがマカオGPの醍醐味だ

公道を封鎖したサーキットをマシンが限界ギリギリの走りで駆け抜ける。デコボコの路面、カードレールはむき出しのまま。これがマカオGPの醍醐味だ

11月の、というより年間を通してもマカオ最大のお祭り、といえるモータースポーツの祭典「マカオ・グランプリ」。

64回目となる今年は、11月16日から19日まで行われる。

最大の魅力は、世界遺産が並ぶマカオの街並みを封鎖して公道で行われるという点だ。

普段は、市民の足であるバスやタクシー、乗用車が走る一般の道がこの期間だけ封鎖され、1周6.2 キロの「ギア・サーキット」に変貌するのだ。

このコースを舞台に、最高速度、時速250 キロを超える怪物マシンやスーパーカー、排気量1000 ccのスーパーバイクが駆け抜ける。もともと世田谷区の半分ほどの面積しかないマカオ。その”サーキット“たるや、通常のレースに使用されるサーキットなら準備されている退避所や、安全設備も置く余地が難しく、むき出しのガードレールがそのまま、という場所も多いのだ。

「公道レース、というとF1の『モナコ・グランプリ』が有名ですが、実はマカオはモナコの3倍難しいと言われます」とモータースポーツに詳しい編集者氏。その理由を、「海側の短い直線では最大速を出し、山側に入ると、狭い道幅で曲がりくねったコースを、バトルを繰り広げながらクリアしていかなければならない。ドライバーのテクニックとメカニックの技術を要求するという点では世界一ですね」と解説する。アイルトン・セナやミハエル・シューマッハといったF1界のスーパースターがマカオから誕生したのもうなずける。

「モータースポーツを良く知らなくても、間近に見る迫力という点で、間違いなく世界最高のレース」と、編集者氏は語る。

コースを歩けるのが「マカオ・グランプリ」の楽しみ!

普段は平穏なマカオの町並み。日常の生活道路が、「マカオ・グランプリ」の期間中だけ、白熱のサーキットに変身する

普段は平穏なマカオの町並み。日常の生活道路が、「マカオ・グランプリ」の期間中だけ、白熱のサーキットに変身する

公道を使ったレースだけに、数日前に現地に行けば、実際のコースを歩いてみることも可能だ。さらに、レース開催中も午後6時ないし6時半には封鎖が解除されるので(朝は午前6時から封鎖)、解除直後にコース周辺を歩いてみれば、高速走行による摩擦熱でタイヤの焼け焦げたにおいの漂う現場の雰囲気を間近で感じることもできるのだ。

スタート・ゴール地点は、海と貯水池に挟まれたマカオ外港フェリーターミナル前。海側のホームストレートは幹線道路の4車線の友誼大馬路(最大幅14メートル)だ。

車は「マンダリン・オリエンタル・マカオ」の前を通り、右90度のターンを迎えるのが、紀行小説「深夜特急」で有名な「ホテル・リスボア」の前だ。このホテルのカジノには著者の沢木耕太郎がのめりこんだとか。今も「マカオで迷ったら、『リスボア』に泊まれ」と言われるほどの名門だが、『マカオ・グランプリ』でも、この『リスボア・ベンド』が一番の見どころ。時速270 キロにも達する高速で競う各車が、少しでも早くとコーナーに殺到するさまは壮観です。一番の抜きどころでもあるだけに、クラッシュも多い」とモータージャーナリスト。当日は特設スタンドが建てられるが、ここでの観覧がもちろん一番人気だ。

沢木耕太郎「深夜特急」で有名な「ホテル・リスボア」前のコーナーが最大の見どころ。レース期間中は、巨大な仮設スタンドが建てられ、観客は、迫力満点のバトルをかたずをのんで見守る

沢木耕太郎「深夜特急」で有名な「ホテル・リスボア」前のコーナーが最大の見どころ。レース期間中は、巨大な仮設スタンドが建てられ、観客は、迫力満点のバトルをかたずをのんで見守る

ここを曲がると左側は石壁、右側は崖という山側のテクニカルなコースに。道幅も2台が通るのがやっとの狭さだ。サンフランシスコ・ヒルと呼ばれる加思欄馬路の急坂を上がり、連続コーナーを過ぎると、世界遺産に登録されているギア要塞の下にさしかかる。そして、再び貯水池にさしかかると待ち構えているのが、マカオ名物の超低速180 度ヘアピン(メルコ・ヘアピン)だ。

コース幅は全コース中最も狭い7メートルで、ステアリングを目いっぱいに切らねばならず、もしクラッシュすればたちまちコースをふさいでしまうため、直前から追い越し禁止区間になっている。そこから急激な下り坂を過ぎると、再び海側区間へ。メーンのF3のベストラップが、1周6.2 キロを2分11 秒程度。時速約170キロの速さだ。

マカオは英雄の登竜門

「マカオ・グランプリ」で、もっとも有名なのは、日曜日に決勝が行われる国際F3レース。F3とは、レース専門のフォーミュラーカー(オープンホイール)の3番目のカテゴリ(F1が世界最高峰)の意味だ。マカオには将来のF1昇格を狙う世界中の優秀な若手ドライバーが集い、「英雄の宝庫」といわれるほど、後のチャンピオンドライバーを輩出している。

最も有名なのは、国際F3レースとして初めて行われた1983年に優勝したアイルトン・セナ(ブラジル)。

23歳の若さで優勝したセナは翌年にF1に昇格、「音速の貴公子」の異名をとり、ワールドチャンピオンとして君臨した。

「皇帝」ミハエル・シューマッハ(ドイツ)も1990年に21歳でマカオを制し、のちのF1のワールドチャンピオンへと上り詰めた。日本人でも今年アジア初の「インディ500レース」制覇で話題になった佐藤琢磨が、2001年に24歳で優勝している。

バラエティ豊かなレース

いわゆる「ハコ車」市販車レースの世界最高峰「世界ツーリングカー選手権」(WTCC)のギアレースも3 年ぶりに行われる。WTCC は別名ケンカレースと言われ、車体をぶつけあうように競うレースはF3とはまた違った迫力だ

いわゆる「ハコ車」市販車レースの世界最高峰「世界ツーリングカー選手権」(WTCC)のギアレースも3 年ぶりに行われる。WTCC は別名ケンカレースと言われ、車体をぶつけあうように競うレースはF3とはまた違った迫力だ

「マカオ・グランプリ」のお楽しみは、メーンのF3レースと同時に、俗に「ハコ車」と呼ばれる市販車レースの世界最高峰や、ポルシェなどのスーパーカー、バイクの最高峰レースが見られることだ。

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第64回マカオ・グランプリの主な日程 (クリックで拡大)

「今年は、長くF3と並ぶマカオの看板だった『世界ツーリングカー選手権』(WTCC)のギア・レースが3年ぶりに開催されます。

4人乗りで年間2500 台以上が生産されている市販の乗用車の戦いで、欧州などではF1と同等の人気がある。自動車販売に直接の影響があるので、メーカーの気合いも半端ではありません」とレース関係者。

今年のWTCCで熾烈な優勝争いを繰り広げているのは、ホンダ(シビック)とボルボ。

しかも、今年はMAC(マック)3と呼ばれる、メーカーごとに車3台が連なって一緒にタイムアタックするセッションが初めて2日目の金曜日に行われるから、これも注目だ。

一方、「GTワールドカップ」は、いわゆるスポーツカー、スーパーカーによるレース。

GTは「グランツーリスモ」(イタリア語)の略で、2シーターの豪華な車が並ぶ。

参戦車両は、ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ、BMW、アウディ、日本車ならニッサンGT―R、ホンダNSXといった、カーマニアなら垂涎の名車。数百万円から数千万円もする超高級車によるバトルは、また一味違うワクワク感が漂っている。

日本人が大活躍した「バイク・グランプリ」

「マカオ・グランプリ」は、大会が始まった当初は4輪のレースだけだった。それが、1967 年からバイク部門がスタート。ここでは日本勢が圧倒的な強さを見せたという。第1回、第2回をヤマハの長谷川弘が制するなど、1980 年までに10度も優勝しているのだ。

現在のレースで使用するマシンは排気量1000ccのスーパーバイクが主流。コースが狭い分、うなりをあげながら目の前を走り抜けるマシンの大きさが際立つ。マカオの狭いコースで、ガードレールぎりぎりを怪物マシンが疾走する様は、圧巻の迫力だ。

グランプリレースのスタートはお金持ちの車自慢レースだった! !

第1回のレースが行われたのは、ポルトガルの植民地時代の1954年。マカオ在住の自動車愛好家3人が当時の警察署長の許可をとりつけて、公道を使って行ったのが始まりだったという。当初は、厳密なレギュレーションもなく、それぞれが自慢の車を持ち込み、市販車を改造したツーリングカーと、レース専門のフォーミュラカーが一緒に走るという状況が1977年まで続いた。

スタンド観戦は平日がお得

巨大なチェッカーフラッグのイメージで塗装されたマカオ外港フェリーターミナル前がグランプリレースのスタートとゴール地点となる。表彰式もここで行われ、勝者は世界一の栄冠に輝く

巨大なチェッカーフラッグのイメージで塗装されたマカオ外港フェリーターミナル前がグランプリレースのスタートとゴール地点となる。表彰式もここで行われ、勝者は世界一の栄冠に輝く

レースを実際に観戦するためには、特設スタンドのチケットが必要だ。日本から見に行くには、旅行代理店などを通じて先に買い求めておくことがお勧めだ。

スタンドには、スタートとチェッカーフラッグを受けるゴール、表彰式などが観られる「グランド・スタンド」(土日550 パタカ、自由席)、「ホテル・リスボア」脇に特設される「リスボア・スタンド」(土日900 パタカ、指定席)、メーンスタンド脇で第一コーナー前の「貯水池前スタンド」(土日350パタカ、自由席)がある。

一番人気は「貯水池・スタンド」で、こちらは途中の飲食などにも便利だが、早めの入手が必要だ。

「少しだけでも、レースの雰囲気を味わいたい」という人には、初日、2日目の平日のチケットがお得だ。

「決勝のある土日と違って、すべてのスタンドのチケットが50パタカで購入できる。練習走行と予選ですが、迫力は本番レースと変わらないので、雰囲気を味わいたいという人にはこれで十分ですよ」と現地のガイドの女性が語る。

また、グランプリ期間中に宿泊するなら、ホテルを予約するときに、できればコースの見えるホテルを選べば、普段と違うマカオを体験できる。

スタートを待つドライバーは神経を研ぎ澄ます

スタートを待つドライバーは神経を研ぎ澄ます

マカオを制するものは世界を制する」。人車とも世界最高の技量を要求するマカオのサーキットに挑むチームスタッフの表情は真剣そのもの

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お腹を空かせてGO!マカオ最大の屋台村イベント
第17回 マカオ・フード・フェステイバル

11月10日(金)~26日(日)

毎年11 月に、「マカオタワー」前の西灣湖広場で約2週間にわたり開催される食の祭典。100 店近い屋台が立ち並び、大勢の人で賑わう。地元マカオの広東料理やポルトガル料理をはじめ、アジア各国や欧州など、世界各地の“ 本場の味” が楽しめる。毎年特定の国にスポットを当てたコーナーが特設されたり(今年のテーマ国は日本)、音楽ライブやゲーム、打ち上げ花火などの催しも。食券制なのでオーダーもスムーズ。一皿30パタカ(約420円)前後から楽しめるので、好奇心の赴くまま、世界のグルメを堪能しよう。

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