新しい年を祝う祭り「春節」で、福と金運にあやかる


Fortune and Luck

中華圏における龍は、幸せ をもたらす神様。春節の際 には、道教の廟の前やホテ ルのロビーなど、あちこち でドラゴンダンスが披露さ れる。けたたましく鳴り響 くドラの音が、お祝いムー ドを盛り上げる。

中華圏における龍は、幸せをもたらす神様。春節の際には、道教の廟の前やホテルのロビーなど、あちこち
でドラゴンダンスが披露される。けたたましく鳴り響くドラの音が、お祝いムードを盛り上げる。

新しい年に笑顔があふれる

中華圏の人々にとって、新しい年を祝う大切な行事「春節」。旧暦の1月1日、2018年は2月16日から18日までの3日間が、日本で言う正月三が日でパブリックホリデー(公衆休日)。さらに19日、20日は振替休日で、計5連休となる。

現地ガイドの女性が、「マカオを含む中華圏の伝統行事は、今も旧暦で行われることがほとんど。中でも春節は最大の行事です。この時期に旅行をする中国人も多いので、人気観光地のマカオは大にぎわい。いつもとはひと味違ったムードが楽しめますよ」と、教えてくれた。

新暦の年末年始が過ぎ去ると、待ってましたとばかりに春節の準備が始まる。仕事納めに向かって人や車がせわしなく行き交い、商店街や市場は新年の準備をする買い物客で、レストランは忘年会のグループでいっぱいになる。

路地には正月飾りや、線香に爆竹、花などを売る屋台が建ち、マカオの街は日ごと春節に染まっていく。

正月飾りは「赤」と「黄」の洪水

マカオ観光の拠点となるセナド広場も、たくさんのランタ ンや、干支の飾りなどで春節に集う人々を迎える。夜にな るとライトアップされ、昼間とはまた違った表情を見せる。

マカオ観光の拠点となるセナド広場も、たくさんのランタンや、干支の飾りなどで春節に集う人々を迎える。夜になるとライトアップされ、昼間とはまた違った表情を見せる。

大掃除を済ませた民家や店舗の入口は、赤や黄(金)の正月飾りで彩られる。赤は縁起がよく魔除けの意味もあるとされる色。黄(金)はそのまま金運の象徴。家族の健康や繁栄を願う言葉が書かれた張り紙「春朕」や、「福」の字のモチーフが一般的だ。

中には福の字を逆さにして貼る家も。地元の人にどちらの向きが正しいのか聞いてみると、「どっちでもいいんじゃない?」。マカオっ子らしい大らかな答えに思わず笑ってしまうが、じつは”逆さ福“にも、きちんとした理由がある。中国語で「到(至る)」と「倒(倒れる=逆さになる)」が同じ発音であることから、「来福」を意味しているのだ。ほかにも、魔除けの爆竹の形を模した正月飾りや、道教の神様をかたどったもの、”金のなる木“とも呼ばれる、金柑の実がたわわに実った鉢植えを玄関先に飾る家も多い。金柑の字は、中国では木ヘンに吉とも書くため、金と吉とで、二重に縁起がいいのだ。

また、生花も縁起物のひとつだ。「花開富貴」、つまり、花が開き、富が来るという意味で、一般家庭はもちろん、会社のオフィスにも鮮やかな色合いの生花が飾られる。前出のガイド女性は、「大晦日のうちに花を買って飾る習わしがあるので、大晦日を過ぎるとガクッと値段が下がります。日本のクリスマスケーキもそうじゃないですか?」と、笑った。

ポルトガル統治時代の西洋建築と中国装飾の融合

「大きな音で魔を払う」 縁起物の爆竹を売る店。中 国本土や香港からも、「昔 ながらの爆竹の音とともに 迎える春節」を目当てに訪 れる人が多いという。もの すごい爆音は、現地の人も 耳を塞ぐほど。

「大きな音で魔を払う」縁起物の爆竹を売る店。中国本土や香港からも、「昔ながらの爆竹の音とともに迎える春節」を目当てに訪れる人が多いという。ものすごい爆音は、現地の人も耳を塞ぐほど。

 

「春節」 の飾りつけがされた民政総 署。西洋建築の白に赤い春 節飾りが映える。

「春節」の飾りつけがされた民政総署。西洋建築の白に赤い春節飾りが映える。この時期は、世界遺産を含む主要観光地や巨大リゾート施設、公共施設、むろん道教の寺院にも煌びやかな正月飾りが施され、街中が赤と黄色の洪水になる。マカオの人たちがどれだけこの行事を大切に、楽しみにしているかが実感できる光景だ。

セナド広場や民政総署などの西洋建築にも、干支のオブジェやランタン(中国風の提灯)などが飾られ、吉祥の象徴である龍が躍り、独特の景観を作り出す。場所によっては、夜になるとライトアップされ、クリスマスとはまたひと味違った幻想的なムードに包まれる。年に一度はマカオを訪れるという旅好きの女性によれば、「見慣れた観光地も、いつもとはまるで違って見えます。何度見ても飽きない、東洋と西洋の文化が交じり合うマカオを象徴するような風景。混雑する時期ですが、一見の価値がありますよ」。リピーターにとっても、春節のマカオは格別なのだ。

日本と似てる?マカオの初詣

ドラゴンダンスと並んで、 祝祭イベントに欠かせない ライオンダンス。日本の獅 子舞と比べるとデザインも 派手で、かなりアクロバテ ィック。スポーツとしても 世界各地に広がっている。

ドラゴンダンスと並んで、祝祭イベントに欠かせないライオンダンス。日本の獅子舞と比べるとデザインも派手で、かなりアクロバティック。スポーツとしても世界各地に広がっている。

元日は、日本と同様に未明から初詣に出かける人も多い。行き先は各地に点在する道教の寺(廟)だ。例えば、マカオ最古の寺院で世界遺産でもある媽閣廟は、大勢の参拝客の焚く大量の線香の煙で、あたり一面がモクモク。煙をかき分け石段を上がると、その最上部にマカオで最もご利益があるといわれる観音廟があり、信心深い地元の人たちが一心に祈りを捧げている。参拝を終えたら廟前の広場をブラブラするのも楽しい。元日の朝は毎年恒例のドラゴンダンス(中国の獅子舞)のパフォーマンスが行われ、縁起物を売る屋台も並んでにぎやかだ。

時折、どこからともなく聞こえてくる爆竹の音も、春節ムードを盛り上げる。「爆竹の音には魔を祓う力がある。だから思い切り派手に鳴らすのがいいんだ」とは、地元の老人。爆竹は、青竹を焼いた大きな音で鬼を追い払ったのが始まりとされる。この時期はマカオ半島、タイパにも爆竹を売る場所があり、かつてマカオが火薬の一大産地であったことを思い出させる。

こうした大きな寺院の他にも、マカオの街角には小さな祠がいくつもある。そのひとつひとつに春節の装飾が施され、線香が灯されているのも、心安らぐ光景。長年にわたって地元に根づいた素朴な信仰が感じられる。

春節祝賀パレードで大盛り上がり!

恒例の春節パレードには、各国各地から 1000 人以上のパフォーマーが参加。演奏や踊りはもちろん、華やかな民族衣装も見どころ。

恒例の春節パレードには、各国各地から 1000 人以上のパフォーマーが参加。演奏や踊りはもちろん、華やかな民族衣装も見どころ。

観光客に人気の春節パレードには、マカオ内外から1000人を超えるパフォーマーが参加。聖ポール天主堂跡の前に広がるイエズス会記念広場など、主要な観光スポットを舞台に、干支にちなんだテーマの演武などを披露する。日本からも毎年のように、踊りや邦楽のチームが参加。前回は北海道のYOSAKOIソーランチーム、その前は山形・尾花沢花笠踊りチーム、徳島・千代の会(三味線グループ)、東京・高円寺の阿波踊りチームなどがパフォーマンスを披露してきたが、今回は、沖縄の獅子舞やエイサーをベースにした創作芸団「REQUIOS(レキオス)」が参加予定だ。

ちなみに「レキオス」とは、ポルトガル語で「琉球人」を指す言葉。大航海時代に琉球を訪れたポルトガル人が、友好的で平和を愛する沖縄の人々を、親しみを込めてそう呼んだことに由来するという。ポルトガル統治の長かったマカオの地でも、渾身のパフォーマンスを披露してくれるに違いない。

パレードを見物するなら、マカオ科学館から西灣湖までの約3㎞、2時間のルートはもちろん、フィナーレとなるマカオタワー前の花火もお見逃しなく。

新年のあいさつとお年玉

日本の「あけましておめでとうございます」にあたる、最もポピュラーなあいさつは「恭喜發財(コンヘイファッチョイ)」。意味はそのものズバリ、「金運に恵まれますように」というのが中国的だ。

このほか、「新年快楽(サンニンファーイロック)」=あけましておめでとう、「身體健康(サイタイギンホン)」=健康でありますように、「萬事盛意(マンシーセンイ)」=すべてうまくいきますように、といった言葉を、たくさんかけるほど喜ばれるという。

「小さな子どもたちも、大人に会うと上手に新年のあいさつをするよ。利是(ライシー)をたくさんもらえる、稼ぎどきだからね」と、ニコニコしながら教えてくれたのは、地元のおばあちゃん。

利是は、日本のお年玉に当たるもので、マカオでは専用の赤い封筒に入れて配る(そのため中国本土では「紅包(ホンパオ)」という)。

前出のガイドの女性によれば、「春節が近づくと、スーパーや文具店、雑貨店、キオスクのようなスタンドなどでも、利是の封筒を買うことができます。いろいろなデザインがあるので、お土産にもいいですよ」とのこと。

日本と大きく違うのは、この利是を大人にも配ること。会社の部下や取引先、よく行くレストランのスタッフ、マンションの管理人など、目上の人が目下の人に幅広く配る習慣があるので、楽しみにしている大人もじつは多いという。たくさん配る必要があるため、中身は日本のお年玉に比べると少額で、紙幣で20パタカ(約300円)から100パタカ(約1400円)ほどが相場だとか。ただ、新札が望ましいといわれるあたりは、日本にも通じる価値観だ。

春節に食べる料理はとことん縁起を担ぐ!

正月料理は、日本のおせち料理と同じく、どれも縁起物。「家族円満」「健康長寿」「商売繁盛」「子孫繁栄」などの意味を持つ。

例えば餃子や牡蠣、アワビは、形が昔の貨幣に似ていることから富を表すとされ、長い麺は長寿を。日本の飲茶レストランなどでも人気の大根餅は(運が)上向きになるように。

これは「餅」と「高い」の発音が同じであるためだ。魚も「余る」と同じ発音で、余裕のある年になりますように、という願いが込められている。また、丸い団子に胡麻をたっぷりまぶして揚げた「煎堆」も、縁起物ののひとつ。サイズはピンポン玉くらいから、こぶし大のものまでいろいろで、丸い=圓は、家族の円満、団らんを表す。広東料理で特徴的なのは「盆菜」。大きな鍋に縁起のいいごちそうを積み重ね、家族みんなで囲んで食べる豪華な祝祭料理だ。

こうした料理からも分かるように、マカオの人たちは今も家族の絆を大切にしている。最近では、春節の時期に海外旅行に出かける人たちも少しずつ増えてきたが、やはり春節は、普段離れて暮らしている家族や親せきとともに過ごすのが王道なのだ。

春節のマカオに行くならここをチェック!

中国本土を含め、春節を祝う風習が残る中華圏の人たちにとって、近場のマカオは人気の旅行先。ホテルが取りにくいだけでなく、宿泊費も普段より高めになる。また、個人商店やデパートも休みになるので要注意だ。

「最近では、春節の期間中も営業しているスーパーやコンビニも増えたので、必要なものが買えなくて困るということはないでしょう。聖ポール天主堂跡などの観光地周辺では、飲食店や土産物店も営業しています。ただ、春節の特別料金が加算されることがあるので、滞在費は普段より高くなる可能性も考えたほうがいいですよ」(地元ガイド)。

とはいえ、一年で最大の行事が行われるなか、いつもとは全く違うマカオを体験できる絶好の機会。行くならとにかく早めにホテルを予約し、心の準備をして向かいたい。2018年の春節にあたる2月は、気温が10℃以下になる日も多い。普段温かいぶん暖房設備も万全とはいえないので、日本と同じくらいの服装を用意しよう。

おすすめは、ホテルステイをメインにした過ごし方。フードコートやショッピングモール、シアターなどは春節でも通常通り営業しているし、春節を盛り上げるイベントも開催される。日本の正月はあまりゆっくりできないという人は、マカオでもう一度、新年を祝ってみるのもいいかもしれない。

右端:パレードは例年、午後8時前後にスタート。それぞれの踊りや音楽を披露しながら、約3km の道のりを練り歩く。 右から2番目:太鼓や鳴り物も各国各地でそれぞれ異なるが、中華圏のものはとくに見た目も音も派手。大きな音を立てることで、災厄を追い祓う意味もある。 右端:カラフルな衣装で目の前を通り過ぎる各国のパフォーマーたち。声をかければ皆飛び切りの笑顔で応えてくれる。

右端:パレードは例年、午後8時前後にスタート。それぞれの踊りや音楽を披露しながら、約3km の道のりを練り歩く。
右から2番目:太鼓や鳴り物も各国各地でそれぞれ異なるが、中華圏のものはとくに見た目も音も派手。大きな音を立てることで、災厄を追い祓う意味もある。
左端:カラフルな衣装で目の前を通り過ぎる各国のパフォーマーたち。声をかければ皆飛び切りの笑顔で応えてくれる。