中国の文化と習慣の中で「福」と出会う


fortune

Discovering fortune in the Chinese culture and customs

タイパ最古の道教寺院「北帝廟」。海の神様であり土地を災厄から守る守護神で、頼もしい神様の前で、無心に子供たちが遊んでいる

タイパ最古の道教寺院「北帝廟」。海の神様であり土地を災厄から守る守護神で、頼もしい神様の前で、無心に子供たちが遊んでいる

 

「福」のステッカーで財福を呼び込む

店舗や住居の玄関の周囲に貼っておくステッカーの数々。「平安」に入ってきてもらって、家の中には「福」を呼び込みたいという庶民の願いの表れ。

店舗や住居の玄関の周囲に貼っておくステッカーの数々。「平安」に入ってきてもらって、家の中には「福」を呼び込みたいという庶民の願いの表れ。

家々の玄関や商店の入り口、はてはオフィスビルの正面玄関にまで貼られている「福」のステッカー。赤地に金文字で描かれた「福」のインパクトは強く、「なんとしても、『福』を呼び込むぞ」という意気込み(?)すら感じさせる。

この「福」ステッカー。時々、上下が逆さまに貼られているのを見かける。いったい、逆にすると何の意味が?

謎を解いてくれたのは、会社経営者のマカオ人女性だ。

「『福』の文字を逆さまに貼るのは『倒福』といいます。『倒』は逆さまの意味で、発音は『到来する』の『到』と同じ。来福を願うためのものなんですよ」

この「倒福」の意味について、彼女はこんな由来を教えてくれた。

「『福』をお願いして、『福』をいただけた家は『福』の文字を逆さまに貼ると言われています。『福』を我が家に届けてくださってありがとうございます、という感謝の意味を表しているのです」

願いと感謝。果たしてどちらが正しいのか。

「どちらも正しいと言えますね。『福』を招きたいという気持ちは同じだし、いただけた『福』に感謝するのも同じ。感謝しないと、次の『福』は来ないものですからね。マカオでは、お正月に『福』を貼って、来年までそのまま貼っておく。扉に貼れば、雨にも当たるし、色褪せるけど、それでも剥がさずに、そのままに置くのが慣わしなんですよ」。と彼女は教えてくれた。

ちなみに、玄関の扉だけでなく、部屋の窓ガラスなどにも貼り付けるという。「福」に感謝して「福」をいただく。そんな謙虚さが、幸せを呼ぶのかも?

タイパの街角で、壁と柱の隙間にお座りになっていた金色の小さな「大黒様」を発見!隅っこから福々しい笑顔で通る人を見つめていた。

タイパの街角で、壁と柱の隙間にお座りになっていた金色の小さな「大黒様」を発見!隅っこから福々しい笑顔で通る人を見つめていた。

 

あちこちにおいでになる「門口土地神」様

マカオの地名発祥の媽閣廟。

マカオの地名発祥の媽閣廟。

「マカオの人は信心深いって?神様は大事でしょ。昔からのしきたりで、神様とおつきあいしている人は多いからね」

水坑尾街 (ソイハンメイガイ)に近い市場の店先で、主人らしきおばさんがこう言った。手に持っているのはバナナとお線香。おばさんの足元には、高さ50センチほどの祠のようなものが置かれている。「門口土地神」と書かれている下には香炉が置かれている。おばさんは香炉の灰を捨て、周囲を丁寧に掃除すると、線香に火をつけ、バナナを供えた。

「この神様をお祀りしておくと、邪気が家の中に入れないのよ。外からの邪気が入ってこないから、家の中は安全というわけね」このおばさんの店だけでなく、周囲を見れば、さまざまな「門口土地神」様が祀られている。大きさやデザインが微妙に異なるのも興味深い。

 

名前が違っても役割は共通?

お土産物店にいた神様たち。金魚もマカオでは縁起物だ。

お土産物店にいた神様たち。金魚もマカオでは縁起物だ。

玄関先や店先にある「門口土地神」。よく見ると、「門口土地財神」、「前後主財神」などと書かれている神様もいる。

マカオの人に聞くと、「意味はみな同じ。どの文言を選ぶかは好みですよ」とか。

いずれも、外からの邪気を家の中に寄せ付けず、家内に財福を招いてくれるという民間信仰だという。

この神様を祀るには、香炉、香炉を載せる台、燭台、お供え物の皿などがセットになっているが、「これも、厳格に形が決まっているわけではない。それぞれの家で好きにお祀りしていいんですよ」と地元の商店のおじさんが教えてくれた。

「好きにお祀りしていい」とは、なんともゆるやかだから、それがマカオの土地柄かも。

ゆるやかさとおおらかさで祀られた神様だけに、観光客にも分け隔てなく御利益がありそう。街歩きの途中で手を合わせて、邪気を払っていただくのもいい。

 

縁起にこだわるマカオの人々

媽祖様へのお願いが書かれた風車がずらりと並ぶ。庶民の熱い信仰心が伝わってくる

媽祖様へのお願いが書かれた風車がずらりと並ぶ。庶民の熱い信仰心が伝わってくる

マカオの人は、縁起にこだわるという。たとえば、新しい家はもちろん、巨大なオフィスビルを建てるときでも、きちんと風水を見てもらい、建築に取りかかる日も縁起のいい日を選ぶという。

前述の女性の話では、「引っ越す時なども、縁起は気にしますよ。まず、新しい部屋の四隅にお線香を立てて邪気を家から出します。その前に住んでいた人がどういう人か分からないし、新築でもいろいろな人が関わっていますからね。悪いものをもっていたら大変。マカオには、引っ越しなどの時にお祓いをする専門のおばさんもいます。私も引っ越しをするときに、ちゃんとお祓いをしましたよ。その方が気持ちよく住めるでしょ」。

スマートなスーツに身を包んだ彼女の口から、古風な言葉が飛び出した。だが、よく考えると、気分よく新生活のスタートを切るには「邪気を払う」ことは大切な行事だろう。

中国の歴史から生まれたマカオの「来福」「招福」「お祓い」は、実は、気持ちを前向きにして生きていくための知恵かもしれない。

 

豚のネックレスに込められた「招福」

コタイの豪華宝飾店でも下町の貴金属店でも必ずと言っていいほどショーウインドーに飾られているのが金の豚。結婚式用のネックレスとしての利用が多く、財を表す金、子宝に恵まれるブタが何匹も連なり、一族の繁栄を願う象徴という。

コタイの豪華宝飾店でも下町の貴金属店でも必ずと言っていいほどショーウインドーに飾られているのが金の豚。結婚式用のネックレスとしての利用が多く、財を表す金、子宝に恵まれるブタが何匹も連なり、一族の繁栄を願う象徴という。

マカオの貴金属店のショーウインドーで必ずといっていいほど見かけるのが、黄金の豚のネックレスだ。丸々と太った豚が3、4匹もぶら下がっている。豚はどうやら母豚をイメージしているらしく、乳を飲む子豚が何匹もくっついている。母豚の部分は金も分厚く使われ、重量感たっぷり。首から提げれば、さぞかし重いことだろう。

この豚のネックレスは、実用ではなく結婚式の縁起物だという。

豚は多産なことから「子宝に恵まれる」という意味が込められ、子孫を増やし、家を繁栄させるという願いが込められている。素材を金にしているのは、金は財でもあり、裕福さの象徴であることから。戦乱の時代から金は、「いざというときのための備え」として人々に大切にされてきた。いずれにしても、縁起物としての意味は、「財産と子宝に恵まれた幸せな人生を送るように」という願いが込められているめでたい装飾品なのだ。 こうした由来のある黄金の豚のネックレスだが、実際に結婚式で花嫁が身に着けるわけではないという。

「親戚の女性が身に着けて出席することはあると聞いていますね。また、金は文字通り金なので、結婚式ではブレスレットなどをじゃらじゃらと着けるしきたりもあるようです。最近は、縁起よりもおしゃれ感を重視するカップルが増えているので、こうした縁起担ぎは、もっぱら親世代ですね」とガイドの女性が教えてくれた。

たしかに、結婚式に呼ばれておめかしして、最後にこのネックレスを着けるか…。うーん、ちょっとおしゃれじゃないかも!?

マカオ科学館前の「ハートの木」。結婚式の記念撮影の「前撮り」スポットとしても人気で、晴れた日には何組ものカップルが木の下で本番の衣装でポーズを取るという。

マカオ科学館前の「ハートの木」。結婚式の記念撮影の「前撮り」スポットとしても人気で、晴れた日には何組ものカップルが木の下で本番の衣装でポーズを取るという。

ウォーターフロントから突き出た橋の先にたたずむ黄金の観音像。太陽の光を浴びて輝く姿に、思わず手を合わせたくなる。穏やかな表情もありがたい。

ウォーターフロントから突き出た橋の先にたたずむ黄金の観音像。太陽の光を浴びて輝く姿に、思わず手を合わせたくなる。穏やかな表情もありがたい。


渦巻線香は船乗りへの祈り

あちこちの寺院で見かける渦巻線香。1か月も燃え続けるような大きなものが並ぶと、周囲はうっすらと霞がかかったようなおごそかな雰囲気になる。

あちこちの寺院で見かける渦巻線香。1か月も燃え続けるような大きなものが並ぶと、周囲はうっすらと霞がかかったようなおごそかな雰囲気になる。

マカオの寺院で見かける渦巻線香。静寂の中で円錐形に渦を巻いた線香から、薄灰色の煙がゆっくりと立ち上っている。

大きな寺院ともなると、渦巻線香の数も多く、それぞれが燃えているときは、あたりにもやがかかったように見える。この線香の煙のベールの向こうにおられる神様に向かって、一心に祈る姿は、マカオの寺院ではおなじみの光景だ。

線香とは、本来、祈るためのもの。「門口土地神」などには、日本と同じような丈の短い線香が供えられており、これは火をつけてしばらくすれば燃え尽きてしまう。

それに対して、渦巻線香は大きさによって1週間、2週間と燃え続ける。長いものなら1か月の間、火が絶えることがないという。

昼夜を分かたず燃え続けるためには、長い長い線香である必要がある。そこから、渦巻き型が考案されたのだろう。

この不思議な形の線香は、海に囲まれたマカオという土地そのものに深く関係しているという。その由来を土地の古老が教えてくれた。

「昔、漁民が漁に出ると、1週間、2週間と帰らない。長ければ1か月も海に出たままだった。その間、残された家族や恋人は漁民の無事を祈り続ける。通信手段なんてない昔は、船乗りが自分の無事を知らせる手段もないし、家族もひたすら待つしかないからね。そのために、何日も、何週間も燃え続ける線香が求められたんですよ」と。

今日も、燃え続ける渦巻線香。その祈りは、21世紀の今となっては、さすがに漁に出た人のためだけの祈りではないだろう。だが、昔も今も、渦巻線香に火をともし、待ち人への思いは変わらない。

 

お店の奥で目を光らせる関帝

商売繁盛の神様として祀られている「関帝」。家の中はスペースの都合上、「廟」ではなく「祭壇」だ

商売繁盛の神様として祀られている「関帝」。家の中はスペースの都合上、「廟」ではなく「祭壇」だ

マカオの商店や食堂などでは、”関帝祭壇“が飾られていることが多い。十月初五日街 (サッユッチョンムーヤッガイ)で朝食を食べに入った食堂の奥にも飾られ、その中央には立派なひげを蓄えた「関帝」が出入り口ににらみ(?)を効かせていた。

「関帝」は商売の神様として、広く中国では民間で信仰されている。

「関帝」とは、「三国志」で有名な関羽のことで、信義や義侠心に厚い武将として今も中国の人々のヒーローだ。誉れ高い武将がなぜ「商売の神様」になったのかといえば、帝が塩湖で有名な地方の生まれであるため。帝が塩の密売に関わっていたという民間伝承があり、さらに「義に厚い」とされることから、「商売の神様」としての信仰が庶民の間に広まっていったという。

「マカオの商売人は関帝への信仰は熱心ですよ。毎日、開店前にろうそくに火をともし、お線香をあげてお祈りする社長さんたちは多いですよ」とガイドの女性。

商売繁盛には信心深さが大切。だが、「最近は、祭壇には電灯式のろうそくを使うことも多いです。防火対策ですね」と彼女は”現代的事情“を教えてくれた。

 

🌸海を渡ってやってきた日本のデザインが呼ぶ福🌸

「おたふく」といえば、伝統的な日本美人。正月の「福笑い」などでもおなじみだ。その「おたふく」と、なんとマカオで再会。場所は、ラザロ地区の「マカオ・ファッション・ギャラリー」だ。古いビルを改装したアートスペースで、マカオ政府の文化局が支援、ここから“ マカオ発” の最新ファッションが発信されている。いつ行っても、地元のデザイナーたちの高感度なアイテムが並ぶ楽しいこの店で見つけたのが、「おたふく」をモチーフにしたネックレス。さらに、ショーケースに飾られていがのが「じゃんけん」柄のTシャツ。ご丁寧に、三人の「じゃんけん」で、「グー」が二人に「パー」が一人。ちゃんと勝負がついている。若いカップルが「おたふく」ネックレスと、「じゃんけん」Tシャツを手にとって、なにやら話しながら品定めをしている。さて、その感想は「クール‼」日本の縁起物「おたふく」と勝負に勝った「じゃんけん」柄。異国の地で見ると、ありがたくも新鮮なデザインに思える。

海を渡ってやってきた日本のデザインが呼ぶ福