夏のマカオで、アートと歴史の味を楽しむ。


タイパの民家の壁面に描かれたアート、
ホテルのロビーにさりげなく飾られた美術品、一皿の料理の奥に広がる大航海時代につながる味わい…。

Art on Private Homes, Modern Art in Hotels and Food Trace Reflect History’s Era of Discovery

タイパの中心部にある馬嘉禮前地の店の壁に描かれたポップなアート。鮮やかな色彩が南国の光に映える。

タイパの中心部にある馬嘉禮前地の店の壁に描かれたポップなアート。鮮やかな色彩が南国の光に映える。

Joy of Art and Flavors in Macao’s Summer

アートと食。楽しさがぎっしり詰まったマカオ

初めて訪れても、あるいは何度も訪れても、その度ごとに発見があるのがマカオの楽しさだ。華やかなIRが林立するコタイの夜景、世界遺産の古い教会で祈る敬虔な信者たちの姿、威勢のいい声が飛び交う市場、長い歴史を物語る古い壁、行列ができる麺の店…。マカオは、多彩な楽しさがぎっしり詰まったおもちゃ箱だ。

そんなマカオで最近、話題になっているのがアートの数々。アートといっても、歴史に名を残す著名な芸術家の作品や世界に数点しか残っていない貴重な逸品から、街角の民家の壁に地元の人たちがペイントした絵まで幅広い。そうしたアートを楽しむには、タイパがおすすめだ。タイパの中でも古い町並みが残る地域であるタイパビレッジを訪れるといい。実は、このエリアは、アートを中心に、町の活性化を図っているのだ。

タイパビレッジのアートシーンの中心、タイパビレッジ・アートスペース。左の壁画は、2016年のオープン時に個展を行ったマカオ出身のアーティスト、パット・ラムの作。

タイパビレッジのアートシーンの中心、タイパビレッジ・アートスペース。左の壁画は、2016年のオープン時に個展を行ったマカオ出身のアーティスト、パット・ラムの作。

世界的な芸術家の作品から若者のペイントまで

タイパビレッジのアートは、古い石畳の通りや民家の壁、使われなくなった倉庫、営業中のショップのドア、カフェの看板など、いたるところで楽しめる。路地を曲がれば出会う色彩には、描いた人の感性が豊かに表現されている。

「このエリアを歩いていると、いろいろな絵が描かれてあって面白いんです。何度も来ているのに、『あれ、こんな場所にこんな絵があった』って発見できる。しかも、そのアートが日常生活のすぐ隣にあって、違和感がないのも面白いですね」とマカオが大好きという日本人女性は語る。

古い町だけに、人が住まなくなった小さな家なども多い。地元では、そうした建物を壊して新しく建て直すのではなく、新たな活用法を模索している。それがアートを使った地域の活性化につながっているのだ。

作品を提供しているのは、美術学校出身者や外国で芸術を学んでマカオに戻った人、海外で活躍する新進アーティストら、さまざまな人たちだ。

例えば、坂道の横に立っている電力施設の小屋に鮮やかなペイントを施していたのは、地元の若い女性コンビ。ペンキの缶を足元にずらりと並べ、強い日差しをよけるためにキャップを目深にかぶった彼女たちは、「地元で暮らしています。アートでもっともっと街を面白くしたい」とペンキを塗る手を休めて話してくれた。

大航海時代の歴史が今も息づくマカオの食

2017年、ユネスコの食文化創造都市に選ばれたマカオは、世紀から世紀にかけての大航海時代の影響を受けた独自の食文化でも知られている。

今から500年以上も昔。東洋との交易を求めて、ポルトガル人たちは波濤を越えてやってきた。彼らは、故国を出航してから幾年もかけてマカオにやって来る途上で、いろいろな港に立ち寄り、風を待ちながら錨を下した港で、さまざまな食材や調理法、香料、果実などに出会う。例えば、アフリカでは鶏のグリル、インドではカレーや胡椒、サフランなどの香辛料。マラッカでは飲料水にも活用できるココナッツを知る。そして再び、東を目指して帆を上げる時、船にはそうした食材がぎっしりと積み込まれていたことだろう。

一航海が約10年、といわれるほどの長い航海の末にマカオにたどり着いたポルトガル船は、当時のマカオの漁民たちが見たこともない食糧を運んできた。マカオ料理の歴史の研究者は、「マカオで船を降り、地元で暮らすようになったポルトガル人たちも多かったはずですから、故郷のポルトガル料理と地元の中国人たちの料理がいつのまにか融合していく。それがマカオ料理の特徴なんです」と語る。

マカオ版の「お母さんの味」といわれる「ミンチィ」、カレーとココナッツミルクを使った「アフリカン・チキン」など、マカオ料理は素朴に見えながら味の奥行きが深い。その深さは、大航海時代にさかのぼる長い歴史に重なっている。

マカオ名物のエッグタルト。焼きたてのアツアツで食べると格別だ。

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ポルトガル伝来のお菓子パオンデロー。カステラの原型といわれた素朴な味だ。

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蟹をカレーで煮込んだカレークラブは、マカオを代表する味のひとつ。多彩な香辛料の組み合わせが絶妙だ。

蟹をカレーで煮込んだカレークラブは、マカオを代表する味のひとつ。多彩な香辛料の組み合わせが絶妙だ。