身近な地元料理も芸術的!


Familiar local dishes can be even artistic

饅頭、餃子、シュウマイなどの蒸しものから、揚げ物、パイなど、さまざまな味や形の点心をお茶とともに楽しむ「飲茶」。細部まで凝った造形は、点心専門の料理人「点心師」によるもので、多種多様な生地を使い分け、いくら食べても飽きない工夫がされている。

饅頭、餃子、シュウマイなどの蒸しものから、揚げ物、パイなど、さまざまな味や形の点心をお茶とともに楽しむ「飲茶」。細部まで凝った造形は、点心専門の料理人「点心師」によるもので、多種多様な生地を使い分け、いくら食べても飽きない工夫がされている。

世界最高水準!マカオの中国料理

マカオの中国料理は、世界最高水準といっても過言ではない。

理由のひとつは、中国本土から訪れるグルメな富裕層の厳しい批評眼にさらされているため。もうひとつの理由は、競争相手が他の地域と比較にならないほど多いためだ。

現地でツアーガイドを務める女性によると「マカオには現在、ホテルが85軒あり、うち5つ星以上が37軒。ほとんどすべてに中国料理店が入っているうえ、街に出れば大小さまざまな人気店が軒を連ねています。橋を渡れば、香港の有名店にもすぐ行けるようになりました。そんな激戦区で生き残るには、ちょっとやそっとの『おいしい』では、だめ。高予算のお店ならなおさらです。『また来たい』『人に教えたい』と思わせる、いくつものフックが必要です」と、話す。

「ジ・エイト」名物カニ味噌と豚肉のタルト。ほんのりカレーを効かせてある。

「ジ・エイト」名物、カニ味噌と豚肉のタルト。ほんのりカレーを効かせてある。

グランド・リスボアの「ジ・エイト」は、マカオでミシュランの3つ星を獲得している、唯一の中国料理レストランだ。メニューは豊富で、ディナーは150種類、ランチ限定の点心だけでも40種類ほどからアラカルトでオーダー可能。モダンでクリエィティブな料理を生み出すのは、世界の5つ星ホテルで腕をふるってきたジョセフ・ツェーだ。

金魚の形をしたエビ餃子は、南太平洋ニューカレドニア産のクリスタル・ブルー・シュリンプを使用。今にも動き出しそうなヒレまで、繊細に表現されている。

また、ハリネズミ型のチャーシューまんは、針の一本一本をはさみで立たせ、底はパリッと香ばしい。カレー風味のカニミソと豚肉を詰めたタルトは、サックサクの軽やかな食感。次はどんなものが出てくるの? というワクワク感が最後まで続く。

職人気質と創造力が融合した点心の味と造形

調理学校に学ぶ男性によると、「点心は、見た目が精巧でかわいらしいだけではありません。想像以上に多彩な味、食感、香りを楽しむことができ、広東料理の職人気質とクリエイティビティを駆使した、食べるアートです。生地だけでもかなりのバリエーションがあり、饅頭(まんとう)のようにふわっと軽いもの、チャーシューまんなどによく見られる、ふわっと膨らんで割れるもの、蒸し餃子のようにコシがあり、つるんとした喉ごしのよいもの、透明感があり中の具材の色が楽しめるもの、焼き餃子のようにカリッと香ばしく焼けるもの、小籠包のようにスープを包んで逃さないものなどを具材やデザインに合わせて使い分けていて、飽きることがありません。あれこれ食べてみたいなら、3人以上で訪れるのがおすすめですよ」とのこと。

IRのハイエンドな高級店ばかりでなく、地元で愛されている店でも、点心は芸術的な形で登場する。また、ポルトガル人が伝えたといわれる「バカリャウ」(干したタラ)のコロッケなども、お皿の上にちょこんと載せて供されると、「可愛い〜」と思わず撮影したくなるような愛嬌がある

料理の味をさらに引き立たせる演出力

ジ・エイトの魅力は、料理だけではない。ダイニングそのものがアーティスティックで、エンターテイメント性に富んでいる。

空間演出を手掛けたのは、香港出身のデザイナーで、日本でも人気の高いアラン・チャン。店名にある、数字の「8」のモチーフが全体に散りばめられ、金と朱に彩られた世界に、巨大な金魚が舞う。舞うというのは比喩表現ではなく、プロジェクターを使って壁や床に金魚の映像を映し出しているため、まるで池の中にいるような気分。

前出のガイド女性の解説によれば、「8(八)は、漢字の形から日本でも” 末広がり“と言われる縁起のいい数字ですが、中国ではもっと熱烈に好まれている数字です。その理由は、『8』と『発』の発音が同じだから。『発』には、発展、拡大、お金持ちになるといった意味があります。また、8の字が無限大(∞)と同じ形であることから、子々孫々まで続く発展のイメージもあり、非常に強いエネルギーがあるとされる数字なのです。また、金魚は活力の象徴であり、富をもたらすといわれるモチーフ。ですから、中国の人たちにとってジ・エイトは、そこにいるだけで運気が上がりそうな空間というわけです」。運気、とりわけ金運アップを願うことに屈託のない中国の人たち。郷に入れば郷に従えの精神で、われわれもパワーチャージといこう。

レストランで運気上昇?

金地に赤のお茶缶のディスプレイは「来福」のイメージ

金地に赤のお茶缶のディスプレイは「来福」のイメージ

運気が上がりそうな空間なら、ウィン・パレスのメインダイニング「ウィンレイ・パレス」も負けてはいない。金と翡翠色をテーマカラーとした宮廷風のダイニングの奥、建物のファサードにあたる部分は全面ガラス窓となっており、ウィン・パレス名物「パフォーマンス・レイク」の噴水ショーを眺めながら、食事が楽しめる。その度肝を抜くスケール感は、さすがマカオだ。

マカオ土産の定番、アーモンド・クッキー(杏仁餅)のできたてがザルに並んだ様子や、市場の野菜のディスプレイもポップ・アートのようで面白い。

マカオ土産の定番、アーモンド・クッキー(杏仁餅)のできたてがザルに並んだ様子や、市場の野菜のディスプレイもポップ・アートのようで面白い。

「水は、風水的に富を呼び込むものとされていることから、マカオのホテルには水を使った演出がそこかしこに見られます。なかでも、ウィン・パレスのパフォーマンス・レイクは見応え十分。オペラなどの音楽と照明の演出に合わせて、羽毛のような水しぶきが優雅にロマンティックなバレエを踊ったり、少しの狂いもなく真っ直ぐに空へ舞い上がったり。昼間は30分ごと、夕方からは20分ごとに異なるパフォーマンスを見ることができます。

日没後には、毎日たくさんの人々が鑑賞に訪れますが、『ウィンレイ・パレス』なら、この幻想的なショーを室内から間近に見ることができるため、ちょっとした優越感があります。噴水は店内のほとんどの席から眺められますが、できれば予約時に窓際の席を押さえておくとよいでしょう」(同)。

同店のシェフは、マカオや香港の名だたるシェフたちから敬愛されている広東料理の名手、タム・クオック・ファン。鮮度の高い素材を使った上質で体にやさしい料理は、いくら食べてもお腹にもたれることがない。ライチの木を使ってスモークした叉焼豚や、生後20日未満の特別な鳩を使った焼き物など、手間ひまかけたシグネチャー・ディッシュを、ゆっくりと味わおう。

ビュッフェで、エンターテイメントの極みを味わう

マカオらしい、エンターテイメント性のあるダイニングで、もうひとつ忘れちゃいけないのは、各ホテル自慢のビュッフェ。せっかく食の国際都市マカオに来たのだから、アレも食べたい、コレも食べたいという、旅行者のわがままな欲望を存分に満たしてくれる。