初夏の街をハスの花が彩る


Lotus Blossoms Mark Early Summer in Macao

古くはポルトガルの高級官僚の住居であり、現在はミュージアムやギャラリーとして公開されているタイパ・ハウス。ペパーミントグリーンの建物と、ピンク色の蓮花のコントラストが美しく、どこを切り取ってもフォトジェニックだ。反対側には広大な蓮池が広がり、その向こうに見えるのは埋立地のコタイ。きらびやかな巨大リゾート群と蓮池のコントラストもまた、マカオならではの風景だ。

古くはポルトガルの高級官僚の住居であり、現在はミュージアムやギャラリーとして公開されているタイパ・ハウス。ペパーミントグリーンの建物と、ピンク色の蓮花のコントラストが美しく、どこを切り取ってもフォトジェニックだ。反対側には広大な蓮池が広がり、その向こうに見えるのは埋立地のコタイ。きらびやかな巨大リゾート群と蓮池のコントラストもまた、マカオならではの風景だ。

蓮の花が街を彩る「マカオ・ロータスフラワー・フェスティバル」

かつて「蓮花島」とも呼ばれたマカオ。由来は、埋め立てが進む前の半島の形が今よりずっと細長かったため、蓮の長い茎と花に似ていたからとも、もともと蓮が群生していたからともいわれる。

北宋の儒学者、周敦頤(しゅう・とんい)が「蓮は泥より出でて泥に染まらず」と記したように、汚れた泥から花を咲かせる蓮は、清濁が混在する人間社会の中での知慧や慈悲の象徴。仏教との関わりも深く、マカオ特別行政区の区旗にもデザインされている。

「昔から、マカオは蓮の神秘的な力に守られていると言われてきた。数々の戦禍や災害をくぐり抜けてこられたのも、その恩恵なのだとね」とは、地元で食品店を営む老人の言葉だ。

今でも蓮はマカオのそこかしこで見られ、6月の開花シーズンには、「第18回マカオ・ロータスフラワー・フェスティバル」を開催(6月9日〜17日)。同フェスティバルでは、その年ごとに蓮の特定品種が選定され、セナド広場やロウリムイオック庭園、タイパ・ハウス、聖フランシスコ・ザビエル教会前の広場など、主な観光地や公園、通りに植えられる。中でも、毎年、多くの見物客でにぎわうのが、ロウリムイオック庭園と、タイパ・ハウスだ。

蓮の花を楽しむ2つの名所

ロウリムイオッック庭園の蓮池は、東洋的な美の世界。みずみずしい蓮の香りが漂い、時間がゆっくりと過ぎていく。

ロウリムイオッック庭園の蓮池は、東洋的な美の世界。みずみずしい蓮の香りが漂い、時間がゆっくりと過ぎていく。

ロウリムイオック庭園は、19世紀後半につくられた中国人の豪商の庭園を政府が買い取り、1974年から一般公開。クラシックな中国蘇州様式の庭園の中央に蓮池があり、池の周りを曲がりくねる「九曲橋」が特徴的だ。この橋は、「悪魔はまっすぐにしか進めない」という中国の言い伝えから、魔よけの意味があるという。

マカオ半島のランドマーク「グランド・リスボア・ホテル」の建物も、天に向かって花開く蓮をモチーフとしている。

マカオ半島のランドマーク「グランド・リスボア・ホテル」の建物も、天に向かって花開く蓮をモチーフとしている。

地元ガイドの女性によると、「マカオに数ある庭園の中で、もっとも中国的な美しさを誇っているのがロウリムイオック庭園。蓮の花は早朝に咲き始め、午後にはだんだんつぼみに戻っていくので、写真を撮りにいくならぜひ早起きしてお出かけください。早朝の澄んだ空気の中で咲く大輪の花は、神秘的な美しさです。庭園はマカオ市民の憩いの場でもあり、東屋で二胡を演奏する人、太極拳のグループなどもいて、そういう意味でも中国的な雰囲気を満喫できますよ」とのこと。

もうひとつの名所、タイパ・ハウスでは、ペパーミントグリーンのポルトガル建築群と、東洋的な蓮花の融合美が見もの。SNS用にファッション誌のようなポーズを決めて写真を撮る女の子たちや、カップルの姿も目立つ。1921年に建てられた5棟の洋館は、かつてポルトガルの高級官僚らが暮らした場所。後に政府が博物館として改装し、1999年から一般公開している。また、2016年には、「マカエンセの生活ミュージアム」「展示ギャラリー」「クリエイティブ・カーザ」「ノスタルジック・ハウス」「レセプション・ハウス(非公開)」として再構成され、ポルトガル語圏諸国だけではなく、各国各地の文化交流・創造の場になっている。

「タイパ・ハウスの広場の前に広がる広大な蓮池の向こうは、近未来的なコタイ地区の統合型リゾート群。古今東西の多様性を感じる光景も、マカオならではだと思いませんか?」と、ガイドの女性が微笑んだ。

フェスティバル期間中は、蓮にちなんだ料理を出すレストランもあるので、見つけたらぜひお試しを。

初夏はアートの季節

蓮の開花に先立って、見逃せない催しがもうひとつ。初夏の一大イベント「第29回マカオ芸術祭」だ(4月27日〜5月31日)。地元マカオや中国のほか、アジア各国、欧米など海外からもアーティストが参加。演劇、ダンス、音楽、ストリートパフォーマンス、ビジュアルアートなど、多数の公演や関連イベントを、約1ヶ月にわたって展開する。

そもそも、マカオには大小のギャラリーやアートスポットが多く、若いアーティストを支援するムードもあり、アートへの関心が高い街。現代アートのショップを経営している地元の男性は、「ドン・ペドロ5世劇場などの世界遺産をはじめ、マカオ中が舞台となるこのイベントは、私たちにとっても大きな楽しみ。肩肘張らずに参加できる雰囲気がいいんです。人気アーティストの演目は、毎年争奪戦になりますが、無料のコンサートやイベントもあるので、旅行者でも気軽に楽しめると思いますよ」と、教えてくれた。

奇跡を物語るカトリックの祭り

中国や香港などからも多くの見物客が訪れるカトリックの幻想的な行事「ファティマ聖母の行列」。100人ほどの女性信者が身につけている純白の衣装は、繊細なレース使いが美しく、写真を撮る人も多い。

中国や香港などからも多くの見物客が訪れるカトリックの幻想的な行事「ファティマ聖母の行列」。100人ほどの女性信者が身につけている純白の衣装は、繊細なレース使いが美しく、写真を撮る人も多い。

5月13日には珍しい宗教行事が行われる。「ファティマ聖母の行列」だ。1917年5月13日、ポルトガルの小さな街ファティマに聖母マリアが出現した奇跡を祝う、カトリックの行事。聖ドミニコ教会でのミサを終えると、ファティマで奇跡を目撃した子どもに扮した3人と、純白の衣装を着た100人ほどの女性信者たちがマリア像を高く掲げ、大勢のカトリック信者が見守る中、ペンニャ教会まで、約1.2キロを行進する。宵闇の迫る中、ライトアップされたポルトガル建築を背景に、粛々と進む行進は幻想的だ。

ペンニャ教会に着くころには、日はとっぷり暮れていて、わずかな明かりを頼りに野外ミサが行われる。

「厳かなミサは信者だけのものですが、それが終わると、見学していた人たちにも、聖母マリアの純血の象徴である白いバラが手渡されます。この日は、マカオのあちこちで、白バラを手に持ったり胸に挿して歩いている人を見かけると思いますよ」と、現地ガイドの女性。東西文化が溶け合うマカオの初夏のイベント。一期一会の機会をお見逃しなく。