写真家・岸本淳さんに教わって、マカオを素敵に撮ろう!


観光客で大混雑の聖ポール天主堂跡を、離れた丘の上から撮る。珍しい角度が面白い。

観光客で大混雑の聖ポール天主堂跡を、離れた丘の上から撮る。珍しい角度が面白い。

Pro photographer shares how to capture Macao’s beauty with your camera

極意その1 撮影場所を移動する

「わあ、きれい!」と建物だけを入れて正面から撮った写真。人が多すぎるうえに、平面的で面白くない写真になってしまった。

「わあ、きれい!」と建物だけを入れて正面から撮った写真。人が多すぎるうえに、平面的で面白くない写真になってしまった。

威風堂々とした聖ポール天主堂跡のファサードはマカオの世界遺産を代表する建築だ。また、マカオでいちばん高いギア要塞から街を見下ろすと、かつての海岸線を見て取ることができ、歴史を街の変化を感じさせる。今も”現役“の教会としてマカオの人々が祈りを捧げている聖ドミニコ教会の、白い漆喰に縁取られた黄色の建物と広場の波打つカルサーダス(石畳)は世界に類を見ない美しさだ。

マカオの世界遺産の造形美は、画像に収めたくなる魅力がいっぱいだ。だが、「いつも混雑していて写真が撮りにくいです。地元の人もたくさん歩いているし、どうしても、人が邪魔になっていい写真が撮れない」というマカオ大好き女子。そんな彼女に、写真家の岸本淳さんはこんなアドバイスをする。

「有名観光地はどうしても人が多くて、いつも混雑しています。そんな時は、思い切って場所を移動することです。目的の場所が遠目によく見える場所から撮影すると、いつもと違う写真が撮れますよ」。

また、聖ポール天主堂跡の前から撮ると、見知らぬ人たちがたくさん映り込んでしまう。でも、離れた丘まで上ると、大火で前面のファサードだけが残る天主堂の姿が際立つ構図になる。

聖ドミニコ教会の建物から少し離れ、周囲の建物や広場を入れる。写真に奥行が出る。

聖ドミニコ教会の建物から少し離れ、周囲の建物や広場を入れる。写真に奥行が出る。

極意その2 目線の高さを変える

博物館の展示は左の写真のようにぐっと近づけて撮ると、個性的な写真になる。

博物館の展示は左の写真のようにぐっと近づけて撮ると、個性的な写真になる。

観光客の多い場所でカメラを構えると、シャッターを切った瞬間に通行人が前を横切り、見知らぬ人のアップが映ってしまう…。こんなよくある失敗を避けるには、「目線の高さを変えましょう」というのが岸本さんの教えだ。

目線の高さを変えるには、いくつかの方法がある。まず、カメラを構えたまま姿勢を低くすること。いつも立ったままでカメラを構えていると、写真の視点はいつも同じ高さになる。身長165センチの人なら、常に地上から160センチぐらいの高さの写真になってしまう。それが、しゃがんでみると目線の高さは1メートル前後の位置に下がる。そこからカメラを上に向ければ、構図はがらりと変わる。

展示を見ている子供を入れることで、大きさの対比とともに「ワクワク感」も表現。

展示を見ている子供を入れることで、大きさの対比とともに「ワクワク感」も表現。

「私は、カメラを地面に置いて撮ることもあります」と岸本さん。例えば、IRのホテルの大理石の床などは、カメラの位置が低いと光の反射が面白い写真が撮れるという。また、教会の上部と青空、そこに浮かぶ雲の形を入れるなど、「面白い構図」を考えながら撮影すると写真が楽しくなる。

「もし、聖ドミニコ教会を撮るなら、入り口扉の一番下の石段まで映っていなくてもいいと考えてみましょう。カメラを上に向けて、青空を大きく入れて鮮やかな黄色の建物上部を組み合わせると、色彩豊かな写真になりますよ」(岸本さん)。

カメラを持った腕を高く伸ばして背伸びをして撮れば、いつもよりもぐっと高い位置でシャッターが切れる。道行く人を頭越しに撮影する構図となり、動きのある写真になる。

撮影するときは、対象物をアップにしたり、切り取ることで形の面白さも表現できる。

教会の全体を入れずに、ぐっとカメラを上に向けて、青空と白い雲の形の面白さと教会の色を対比。

教会の全体を入れずに、ぐっとカメラを上に向けて、青空と白い雲の形の面白さと教会の色を対比。

極意その3 光の変化を楽しむ

日没前の古い街並みとグランド・リスボア・ホテル。手前の建物が影になり、グランド・リスボア・ホテルが黄金色に浮かびあがる。

日没前の古い街並みとグランド・リスボア・ホテル。手前の建物が影になり、グランド・リスボア・ホテルが黄金色に浮かびあがる。

夜景の美しさはマカオの魅力のひとつだ。マカオを訪れると、夜のラザロ地区やコタイのIR群など、夜も写真を撮ることが多い。

だが、夜景以外にも味わいのある写真を撮れる時間帯がある。例えば、日没をはさんだ夕暮れごろ。空が茜色に染まり、そこに暗さが混じり始め、濃さが次第に増していく。太陽光線が弱まるにつれて空は紫色に染まり、ぼんやりとともる街灯の光の形が浮かびあがり始める。

「日没前後は個性的な写真が撮れるんですよ。ポルトガル風の淡いピンク色の建物の前の街灯の灯り、コロアンの海沿いの並木道の街灯なども、セピア色の感じになって、『ここはどこ?』という意外性のある写真になります。完全な夜景もいいですが、この微妙な時間帯の写真にも挑戦してみてくださいね」(岸本さん)。

コロアンの街は夕暮れ時の美しさも格別。昼間ののんびりとした村の雰囲気からセピア色の映画の一場面のように見える。

コロアンの街は夕暮れ時の美しさも格別。昼間ののんびりとした村の雰囲気からセピア色の映画の一場面のように見える。

極意その4 雨の日も撮影日和

せっかくのマカオの旅なのに、雨に降られてしまった…。旅人ならば、ちょっと残念な気分になりがちだが、岸本さんは「雨の日は、面白い写真が撮れるチャンスなんですよ。晴れた日とは違う街の顔が見えてくる。雨の日にしか撮れないマカオの写真に挑戦してみてください」と語る。

例えば、通りを歩く人の傘、傘、傘。これも写真に撮ると面白い構図になるという。タイパエリアの官也街などは、細い路地や土産物店がぎっしりと並ぶ道が印象的だが、「そこに集まる人がみんな傘をさしている。傘の高さやさす角度がそれぞれ違って、写真に面白いリズムが生まれるんですよ」(岸本さん)。

雨のラザロ地区。傘をさして歩く女性のリズミカルな足の運びが見えるような構図。傘の形がアクセントになっている。

雨のラザロ地区。傘をさして歩く女性のリズミカルな足の運びが見えるような構図。傘の形がアクセントになっている。

また、マカオのカルサーダスも雨の日こそ撮影したい対象だ。晴天なら、なんとなく乾いて、白く見えるカルサーダスも雨の日はしっとりとつややかに光る。石そのものがもつ曲線と描かれた優美な曲線が雨に濡れると思わぬ光を放つ。その美しさは、雨のマカオの持つ美しさにも重なる。アズレージョなども雨の日には、藍が引き立ち、白いタイルとのコントラストがくっきりとして、描かれた形が鮮明に浮かび上がる。

雨に濡れたカルサーダス。いつもは乾いた歩道も、雨が模様をつややかに浮かびあがらせる。

雨に濡れたカルサーダス。いつもは乾いた歩道も、雨が模様をつややかに浮かびあがらせる。

「雨の日のマカオならではの美しさがありますね。ぼんやりと光がにじんで見える街灯、ハスの葉に水滴が落ちる瞬間、一つの傘に入って歩いている男女の姿からは、二人の気持ちが見えそうですね。

雨の日はドラマのある写真が撮れるチャンスなんですよ」と岸本さん。

雨のマカオは、いつものにぎやかさとは違う表情を見せる。ドラマチックな写真を撮るなら、雨の日こそ撮影日和なのだ。

kishimotojun岸本淳 Jun Kishimoto
関西大学卒業。自然の美しさを独自の視点で表現。現在、マカオ、ポルトガルをはじめ国内海外で撮影作品制作。写真術指導にも力をいれている。公益社団法人 日本広告写真家協会 APA正会員。キヤノンEOS学園東京校 講師。
www.kishimotojun.com