Yellow:Faraway Thought to a Small Town in Southern Europe
青空に似合う配色が印象的な海辺の村
コロアン西部のコロアン・ビレッジ。海辺の鄙びた村は、大規模開発が進む現代的なマカオ半島やコタイとは、まったく違った表情を見せてくれる。ガジュマルの並木が続く海岸通りを歩くと、干潟の上に突き出すように建つ家と家の間から海が見える。ちゃぽちゃぽと打ち寄せる波の音は、はるか昔からこの村の人々にとっては子守歌のように聞こえたのだろう。村のロータリーに沿って小さな家が並んでいる。
「わあ、可愛い色のおうち。日本の感覚ではありえない色が、いかにもマカオだね」。
マカオは何度も訪れているというカップルが関心を示しているのは、通りの向こうの家並みだ。グリーンのトタンの家、お隣はイエローの家、前に止まっている小さなピックアップトラックの色もおそろい。青空に似合うなんともカラフルな色合いは、日本の街ではまず見られない配色だ。
「塗装の仕方が素人っぽいのが面白い。この家のお父さんが日曜大工で塗ったのかな」。
南国らしい美しさ、教会のイエロー
そんな想像をしたくなるほど、この村に来ると、庶民の暮らしの雰囲気が生き生きと感じられるのが楽しい。コロアン・ビレッジのメインストリート沿いに建つ聖フランシスコ・ザビエル教会、タイパ・ハウス・ミュージアムから坂を上った小高い丘に建つカルモ教会、セナド広場から石畳の道を歩いて数分の聖ドミニコ教会など、イエローの教会が目立つのもマカオらしい。ポルトガルの教会に似た可愛らしい教会は、その色とデザインを見ているだけでも楽しい。「なぜ、教会がこの色なのですか?」。
素朴な質問に、マカエンセは「よくわからないけど、もともとポルトガルに多いからだと思いますよ」
だが、強い日差しに映える教会の美しさは、マカオの青空に最も似合う配色がイエローだったのかな、という気がしてくる。夏の光の中にたたずむ鮮やかな色の教会は、絵本に出てきそう。ポップで可愛らしい教会は、この街によく似合う。
夜景を彩るイエロー
マカオでも特にポルトガルの面影を残すラザロ地区は、モンテの丘の北東。聖ポール天主堂跡の脇道を10分ほど進んだあたりに広がっている。聖ラザロ教会を中心にしたカトリック教会の信者たちの旧居住地で、ポルトガルの建築と石畳が丁寧に保存された絵になる街並みだ。
現在は、内外の芸術家たちの作品を展示するギャラリーなども多い。
昼間に歩けば、太陽の光がイエローのポルトガル建築に降り注ぎ、その色は青空とくっきりとしたコントラストを描く。
それが一転するのが日没後から。夕暮れとともにライトアップされた街並みは、薄暮、宵、夜…と時間帯によって表情を変えていき、マカオの夜景の多彩な美しさを見せてくれる。
古い建物とカルサーダスという石畳が柔らかなイエローの光に包まれた街路は、昔のヨーロッパ映画の一場面のような雰囲気が漂う。
昼も夜も、どの角に立ってもカメラのシャッターを押したくなる。素敵な写真が撮れそうな街なのだ。
人気のアート空間は、かつての「女子養老院」?!
聖ラザロ教会の前の瘋堂斜巷を歩いて馬忌士街(マアケイスィーガイ)を渡ると、石畳の坂道の途中に小さな門構えが見えてくる、「旧仁慈堂婆仔屋(ジウヤンチィトンポウチャイオッ)」だ。現在、地元政府では、ラザロ地区を、芸術や文化の発信地にしようという計画が進行しているという。その中心のひとつとなる建物だ。
もともとは、1984年に保護指定建築に認定されたポルトガル建築で、緑の濃いクスノキが立つ中庭を中心にした「コ」の字型の2階建て。
名前の由来は、かつて、ポルトガルの難民収容所として使われた後に未婚女性の老人ホームとなったことからだという。
2003年に改装され、現在は「藝竹苑」として、ポルトガル料理のレストラン、ポルトガル伝統の銀細工のアクセサリーやしゃれたパッケージの石けんなどが並ぶセレクトショップなどが入っている。
「ここは、お天気のいい日に来ると、中庭の緑と建物の色が本当にきれいです。昔のポルトガルってこんな雰囲気だったのかしらって思いますね」と、通りで出会ったマカオ好き女子が笑顔で教えてくれた。